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「サークル執筆作品」
『落下流水』


◇落花流水◇

2011.04.14  *Edit 

◇落花流水◇


 僕は今、電車に乗っている。今回は両親とでは無く、友達と、大事な彼女をつれて。
 あれから二年が経った。今思えば刹那に感じるようなその時間は、早く過ぎたと思うけれど、同時に尊いものなんだと言うのも感じる。
 今回は夏休みを利用しての旅行だ。場所は黄昏町、田舎に旅行するにはもってこいの場所だと場所決めの時に僕が提案したのである。なんと、宿はじいちゃんの家。そんなに人数多くないし、どうだろうと交渉してみたら思いがけず了解をもらったのだ。あれには驚いている。
 電車代と少しの食費や諸経費がかかるだけの格安の旅行にはもちろん、隠しているけれど理由があった。それは、夕菜さんとの約束を果たすためだった。
 あの時、僕らは確かに結ばれた。本当に短い間の恋だったと思うけど、濃密過ぎる恋愛だったと僕は思っている。あの後、キスをした後の話だ。抱擁を交わし、キスをした後に、それは起こった。


 僕たちは肩を寄せ合うようにして、その場にいた。雨は晴れて、灰色の空から伸びる光達がとても綺麗だったと記憶している。時間がゆっくりと過ぎていって、不意に夕菜さんが言ったのだ。
「そろそろ、行かなくちゃ』
 と。そう言うのが早いか否か、夕菜さんの体が光り始める。夕菜さんはもう迎えが来てるからと言って笑う。僕は必死に引き留めた。引き留めたけど、夕菜さんは首を横に振る。もう、これ以上は引き延ばせないと。奇跡とは儚いからこそ奇跡なんだと夕菜さんは言った。
 一度限りかもしれない黄昏町の奇跡。それが今、終わろうとしていたのだ。夕菜さんは僕を抱きしめる。柔らかい胸の中で僕は夕菜さんの温かさに触れる。優しい良い匂いがした。
「私が消えてしまったら、あなたは私のことを忘れてしまうかもしれない。でも、私は忘れない。この恋を。あなたのぬくもりを」
「忘れるもんか。絶対に忘れない。夕菜さんを好きな自分を忘れない。僕はその笑顔を忘れない!」
 僕が涙を溜めて言うと夕菜さんはあはは、と笑った。細い人差し指が伸びて、僕の唇に触れる。
「じゃあ、約束して。私が消えてしまったら、私よりも好きな人を見つけて。そして、その人と恋人になること。そして、その人を私に紹介してほしい。それが今の私の願い……」
「でも、夕菜さん以上だなんて、僕にはあんたしか……」
「嬉しいけど、そんな悲しいこと言わないで。私はね、本来はここにいてはいけないの。本当なら、あなたと会わないはずだった、そんな世界のイレギュラーなの」
「でも!」
「やくそく、してくれるよね?」
 少しだけきつい目で見てくるものだから、言うしかないじゃないか。悲しすぎるその言葉を。僕は想いが一杯になった。なりすぎて、馬鹿になりそうだった。おかしくなりそうだった。
「分かった。連れてくるよ。絶対に。夕菜さんに紹介する」
 零れた気持ちを抑え込む。だって、しょうがないじゃないか。これは最後の言葉なんだろう。だったら、ここで男を見せないでどうするんだ。やらないといけない時がある。だとしたら、それはここに違いないのだから。
「でも! 僕は好きだ! それだけは、それだけは本当だから。だから……」
 段々と体がまばゆい光に包まれる。足から光の粒子になって天に昇って行くのが分かった。
 夕菜さんはその言葉を聞くと思いっきり笑顔になる。僕の唇から指を離すとそれを自分の口につける。
「……間接キス」
 えへへ、と笑う。少女的な雰囲気だった。
「ありがとう。本当にありがとう。私もあなたが好き。本当に、本当に……」
 体が消える。柔らかさがフッと失われた。そこからは加速的に体が光の粒子になって行く。消えないで、そう思うけれどその想いは届かない。
 笑顔のまま粒子になる。そして、最後まで切る瞬間に切なそうに笑ないながらこう言うのだった。

 ――あなたを好きになれて、私は本当に幸せだね……。

 消えた光を抱きしめる。もはや感触のない腕の中を見て泣いた。夕菜さんが旅立った、その空を仰ぎながら……泣いた……。


 そして今に至るのだけれど。約束を果たすために駅を降りる。ここからは少しばかり遠いが歩くしかない。夏と言えば、セミである。人気のあまりない道を歩きながら、耳一杯のその大合唱を聞く。
「あっちぃ」
 友達の一人が言った。
「んだよ、歩くのかよぉ」
 さらにもう一人が言った。
「もう、だらしないなぁ」
 僕の彼女の友達が言う。
 そんなやりとりを見ながら僕と、その腕に腕を絡ませている彼女が笑った。向日葵が咲いたような笑顔に僕は惚れたのだ。
 やがて一本の畦道が見えた。僕はその道にみんなと入るといつも座っていたその場所で立ち止まる。
「どうしたんだよ?」
 友達が不審がって聞いてくる。こいつのことだ。早く家に着いて涼しくなりたいのだろうが、ここは立ち止まらないといけない場所だ。彼女を抱き寄せて空を仰ぐ。彼女は不思議そうに僕を見るけれど、僕は笑って誤魔化した。
 ――夕菜さん、みていますか? この人が僕の今、最愛の人です。約束を果たしに来ました。
 空を仰いで心でつぶやく。すると、今まで凪いでいたのに、いきなり突風が吹く。風は森を揺らし、ザワザワと多重奏を奏でた。僕は、夕菜さんが見届けてくれたのだろうと勝手に思いこむことにする。こういうのはそう言う気持ちが大事だと思うから。
「あ、タンポポ」
 彼女が僕の足元を指差して言う。そこには一輪のタンポポが咲いていた。そう言えば、夕菜さんがタンポポのことを好きだったことを思い出す。そう言えば、花言葉だけは教えてくれなかったっけなぁと思っていると、彼女が僕の顔を覗き込みながら言った。
「ねぇ、創人君。タンポポの花言葉って知ってる?」
「ん、知らないなぁ」
 そうかそうか、と彼女は笑った。そして、
「真心の愛って言うんだよ」
 と言った。真心の愛、それは素晴らしい花言葉だ。まさに夕菜さんにふさわしい言葉だ、僕は足元に咲いているタンポポを見て思った。ふと、そのタンポポが夕菜さんのような気がしたけれど、そんなことはさすがにないだろう。
僕はこの先、この人と好き合うことになる。それはとっても幸せで、奇跡のはずだ。好きな人がめぐり合う奇跡。それって実はすごい確率なんだと僕は思ってる。


 あっちに着いたら何をしようか、そう言う事を考えながら僕たちは再び歩き始める。
 バーベキューでもいいし、釣りに行くのもいい。花火大会だって行ける。やることは色々ありそうだ。と言う事は二泊三日の旅路、そうボヤボヤもしていられないかもしれない。
 僕は歩きながら空を仰ぐ。うだる様な暑さけど、こんなに暑い夏だけれど。南に高く広がるスカイブルーの空が今日も綺麗だと思った。
~了~
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まとめtyaiました【◇落花流水◇】

◇落花流水◇ 僕は今、電車に乗っている。今回は両親とでは無く、友達と、大事な彼女をつれて。 あれから二年が経った。今思えば刹那に感じるようなその時間は、早く過ぎたと思うけれど、同時に尊いものなんだと言うのも感じる。 今回は夏休みを利用しての旅行だ。場所...

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