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「サークル執筆作品」
『縁堂へようこそ~真子の章~』


エピローグ

2011.04.12  *Edit 

『縁堂~居場所~』

 あの事件はなんだったんだろうかぁと真子はぼうっとしながらアイスコーヒーを飲む。摩云宇館の二階のパン屋でアイスコーヒーを購入して一人で飲んでいるのだ。ただいま、二時間目始まって少し経ったあたりである。
 琴奈も菜柚も授業に行っているが、真子だけ授業を取っていなかったので、そういう時のための席取り番である。
「あう」
 つい一カ月前にあったばかりの事件を思い出す。悲しいことも一杯あった。怖いことも一杯あった。もう終始泣きっぱなしだったと思う。今思うと恥かしい限りだが、あの事件は少なからず、真子の生き方に変化をくれたと思っている。
 事後報告ではあるが、神隠し事件は早くも収束しつつあった。このままあとちょっとすれば、この噂が広がることもないだろう。ドッペル、という存在になってしまった被害者は基本的に、この世でまた、人間として生きて行くことはできない。つまり、もう存在を壊されるしかないのだ。
 では、その後の説明はどうなるんだろうという事だった。消えてしまって、それをマスコミなどはどう報道するか、警察に対してはどうするのか。そう言った疑問がよぎったけれど、あの女性――鈴蘭曰く、「気にするな。私に任せておけ」らしいのだ。
 その言葉は本物で今になっても、テレビなどでお茶の間を騒がすわけでもなく、警察も特に動いてないように見える。真子の所に事情聴取くらいはあるのかと覚悟していたが、それも無かった。あの人は一体どれくらいすごい人なのだろうかと不思議に思ったが、それを知る術はもう無かった。
 遺族には、それぞれ、辻褄が合うように伝えられたらしい。ちなみに、真子のノートは後に郵送で送られて来た。現在では真子の部屋に大事にとってある。今のノートは琴奈から貸して貰って一通りコピーしてあるから大丈夫だ。
 あの後はしばらく塞ぎこんだものだった。二日は不登校が続いたけれど、琴奈と菜柚の言葉があって、早々に通い続けることになる。何があったのか、当然聞かれはしたがそれを言うことは躊躇われた。これは口にしてはいけないことと思ったからだ。
 ズビビビ、と氷のある所までたどり着くとおなじみの音が聞こえる。アイスコーヒーとってすぐに飲み終わっちゃうから苦手だ。でも、好きなので飲み続けるのであるが。
「あうう」
 机にアゴをつけて唸っていると不意に後ろに気配を感じる。あの時以来、後ろに人が立たれると怖くなってしまい、その分敏感になっている。
 ビクッとなって振り向くと、そこには以外な人間がいた。
「はれぇ……双樹ちゃんと詩織ちゃんじゃないすか」
 あの事件の後で知った、この二人は高校生だったのだ。だから、下の名前でちゃんづけで呼んでしまう。
「よっ、久しぶりぃ」
「お久しぶりです」
 二人は相変わらず性格が顕著なあいさつを終える。詩織は言った。
「あのさ。ちょっち、外でない?」
「はぁ」


 外は暑かった。梅雨は過ぎて、もう夏がやってくる。一足先になきわめく蝉もいるくらいだ。二階のフロアを出てすぐの所に三人はいた。あまり人には聞かれたくないのだという。
「それで私に何か用すか? 学校あるでしょうに」
 真子は早速訪ねた。この時間に、なぜこの二人がいるのか分からない。詩織はにやりと笑うとサムズアップする。
「もち! 創立記念日よっ」
「……という体のサボりなんだけどね」言うが早いか、すかさず双樹が注釈を加えた。
「なんで言うのよぉ」
「なんで嘘つくの」
 この二人の漫才を聞いていると、本人は至って真面目なのだろうが、笑えて来てしまう。これだけでも、この二人に久しぶりにあえて良かったと思った。しばらく眺めていると、詩織が折れて謝った。
「ごめんね。本当はサボりよ……」
「そうなんだ。で、私に何かあるのかな?」
「ああ、うん。あれから大丈夫かなってさ、鈴蘭が様子見に行けって言うから」
 段々と尻すぼみに喋る詩織はなんだか可愛らしい。むずむずと背中のあたりが触発されて、思わず抱きしめてしまう。
「きゃう。何すんの!」
「ん~、だってぇ、可愛いんだもん」
「や~め~て~よ~」
「やめない~」
 スリスリと頬をすり合わせると、詩織のプニプニの頬っぺたが心地よい。いつまでもスリスリしていたくなる気持ちよさだ。しかし、ある程度やっていると、詩織も怒って、突き放した。
「もう、怒るよ!」
「怒ってるじゃん」
 ニシシと真子が笑うと呆れたのか、詩織はため息をついた。なぜだか詩織の方が大人に見えるから不思議だ。
「そこまで元気なら大丈夫ね。よし、帰るか。兄さんにアイスを作って……」
「待ちなさい。まだあるでしょう」
 詩織は帰ろうとしたが、それを双樹が止まる。先のやり取りでは傍観を決め込んでいた双樹が今度は真子を見た。
「葛城さん、あなたに私たちの事務所の所長から連絡があるんです」
「連絡?」
「ええ、これ、どうぞ」
 双樹は言うと、肩から提げていたトートバッグの中からA4サイズの茶封筒を取りだした。それを真子に渡す。中身を見ていいか聞くと、頷いたので見ることにした。
 中には数枚の資料らしきものが入っていた。それと、個人情報やらを書き込む用紙。読んでみると、どうやらバイト募集の紙らしいが……
「これが何」
「あなたを誘っているんですよ。ウチの所長が。だからそれを読んで、考えてみてくださいってことです。では、私たちはこれからやることがあるので」
 それだけ言うと、二人はその場を去っていく。久しぶりに会ったのに、随分とあっさりしたものだった。詩織は「バイバイ」と手を振ってくれたので振り返す。置いてけぼりにされた真子は
「暑ぃ」
 と、とりあえずぼやいて摩云宇館に入ることにした。席に座って、資料を読んでみる。そこには事業内容が書いてある。主な事業内容とはなんでも屋らしい。依頼を受けて、それをこなす。どこにでもあるなんでも屋だ。時給も悪くない。シフトの組み方も真子にとってはよく見えた。
 ペラリと最後の紙をめくる。そこには個人情報などを書き込む誓約書があり、それと共に一枚の小さいメモ用紙が落ちてきた。
「うわっと」
 地面に落ちる前になんとか拾うと、それはどうやら、所長直筆のコメントカードのようなものだった。読んでみる。そこには、

『やぁ久しぶり。あの後でどうかな? まだ心の傷は癒えていないだろう。でもね、立ちあがっていると私は信じているよ。
 君は不思議なめぐり合わせがあるのかもしれない。双樹も言っていたが、とても気になる存在だ。私は君に興味があるよ。
 そこで相談だ。私の事務所でアルバイトとして働いてみないだろうか。もちろん、この前みたいなこともあるだろう。他にも色々なことをやっている。退屈はしないだろうさ。そして、君を更に進化させる、そういう職場であることも約束する。
 そこから一歩出た、世間の目から離れた視点でこの地球を見てみないかい?
 もしも、君が来てくれるというのなら私たち、事務所一同は君の事を全力で歓迎しよう』

 とここまでが手紙の本文だった。そして、もうちょっと下に視線をスクロールさせると、追伸が見えた。

『まぁね。こう言ってはなんだが、私は君がここに来るような気がするよ。
 せっかちな私を許してくれ。でも、前借りでこういうことを言っても良いと思うんだ。だから一足先に私だけ所長特権で言わせてもらうとしようかな。

 ―――縁堂へ、ようこそ……』

 それはちょっと早合点じゃないのかなぁと思いながら、真子は思わずにやけてしまった。それは、その予感はまぁあながち外れていないのではないかなと思ったからだ。
「真子ぉ、何にやけてるの~」
「うわぁ」
 後ろからいきなり抱きつかれる。相手はもちろん琴奈である。気づけばいつの間にかお昼休みになっていた。随分と時間の進みは早いものだと思った。
「で、真子ちゃんは何でにやけてたのぉ」
「ん? なんでもないよっ」
 真子は場所を開けた。資料を封筒の中にしまいながら真子はこれからの未来に思いをはせる。一歩出た、世間の目から離れた視点で地球を見てみないか、という言葉は真子にとってすごく魅力的に思えたのだ。

 真子は誓約書に“よろこんで!”と書いて、資料を封筒へとしまった……。
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