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「サークル執筆作品」
『縁堂へようこそ~真子の章~』


8

2011.04.12  *Edit 

‡‡‡


 双奏鉄鎖を構えながら、真木詩織は走っていた。もう人目につく場所でもないし、それで良いだろう。
 双樹に教えてもらった場所を頭の地図で辿りながら、目的の空間へと一気に飛び込む。本当ならば、少しばかり状況を把握してからの方がいいのかもしれないが、生憎、今の詩織の頭の中にはコケにされた相手へのリベンジしかなかったのだ。
 そこは暗い通路だった。通路を疾走し、飛び込んだ先には開けた空間がある。その奥にはあの夜に見た青い球体がある。しかも、三つもある。さらに見渡すと、今にも連れて行かれそうな手足を縛られている、きっと、双樹の言っていた一般人がいて、それを囲むかのように二人いた。恐らく、あれが敵だろうと詩織は構える。
 青い球体に入れられそうになる手前で、詩織は双奏鉄鎖を放った。気を込めた放った二つの弾丸が相手の腕を貫く。
「!?」
 驚いた相手は一般人を落とす。それを地面すれすれで抱きとめると、また後方へ一気に下がった。
「大丈夫?」
 詩織が相手の顔を見て言うと、相手も、多分詩織自身もかなり驚いた表情で互いを見ていた。その一般人とは、あの時、図書館の前のベンチで話を聞いたこの大学の在校生だったからである。
「あなた、もしかして、あの、えと……」
「葛城真子です」
「そうそう、葛城さんよね!」
 そこまで話したわけでもないから、名前を忘れてしまっていて、少しだけ恥をかく。えへへ、と誤魔化し笑いをした。
「あの、あなたは真木詩織さん、でしょ?」
「そうよ、よろしくね」
 言いながら真子を下ろすと、手足を縛っているものを撃って、自由にさせる。このまま、逃がしても、もしかしたらまた捕まってしまうことも考慮して、それならばと、真子を自分の後ろに退避させた。そのまま後ろに下がりつつ、相手から最も離れた壁へと下がる。
「今は、状況とか聞きたいだろうけど、そういう場合じゃないからさ、とにかく、私の後ろの壁にいて。私は、そこを中心にあなたを守るから」
「え、……はい」
 後ろにぴったりいてもらってもイマイチ戦えないことは分かっているから、ある場所を基点に守って行く戦法にした。双奏鉄鎖を構えなおして、その銃口を相手へと向ける。
「おやおや、双奏鉄鎖か」
 初老の男が詩織の持っている武器を目にしてそう呟いた。
「なんであんたが知ってんのよ」
「なんで知ってるのかって? おかしなことを言う」
 その男が嘲るように笑うと、言った。
「それはこちらの世界の武器だ。持ち出されたものなんだよ。知らないはずがあるまい?」
「あんた何言ってんの?」
 詩織にはよく理解できないでいた。すると、いきなり、側面から蹴りが飛んでくる。
「良く分からないけど、あなたはマスターの敵なんでしょ? そうなんでしょ!」
 詩織はその蹴りをギリギリで所で身体を反らして避けると、その反動を利用しつつ、発砲。しかし、その攻撃は相手に当たることは無い。相手が素早すぎる。狙っている暇がなさそうだった。
「ちぃ」
 舌打ちして、体勢を立て直すと、心の中で呟いた。
 ――双奏鉄鎖、集中の型
 両手に持つ双奏鉄鎖を片方に集中させる。すると、シルエットがアサルトライフルのようになった。空いた方の手にナイフを持つ。
「かかってこいよ! この野郎っ」
 詩織は一気に走りだした。地面を蹴って宙に浮かぶと、空中で照準。一気に相手に気を撃ちこんだ。相手はそれを避けながら詩織に近接する。意思のない、しかし、確実に相手を仕留めんとする拳が詩織の顔面を撃ちぬこうとしていた。
 片腕に持つナイフで軌道を反らす。相手は振りかぶった拳から血しぶきが飛ぶのを恐れないかのように、追撃してきた。
「こいつ化けものなの!」
 着地したところを狙われて下からのアッパーを綺麗に喰らう。一瞬、目の前がブラックアウトしそうになるが、根性で、後ろへと地面を蹴った。転がりながら距離を離して、立ち上がる。銃が無意味なのかもしれないことを悟った詩織は双奏鉄鎖を一旦しまった。多分、この反動が余計なロスを作っていると思ったからだ。
 徒手空拳の構えをとる。詩織とて、その心得が無いわけではない。
 薄暗く、目が慣れていなかったが、次第に、闘っている相手が見えるようになってきた。きちんと相手を見ろ、そして、全力で壊しにかかれ、それが詩織のモットーである。
 しかし、かえって、見えることがデメリットになるとは思わなかったのだ。
 相手を良く見た結果、相手が誰なのか、ハッキリと認識できる。それだけならばまだいいのだろう。知らない相手ならば、正直、いくらでも叩きのめせる。相手はドッペルで、人間ではないのだから。でもどうだ。それが知っている相手ならば、そこまで全力で叩きのめせるだろうか。
「あんたは、あの時の」
 その相手は、あの夜、ビルの中で助けたはずの女性だったのだ。もうあれで助かったはずなのに、手遅れだったというのだろうか。動揺が走った時に、この女性が襲ってきてからは傍観を決めていた男が口を開いた。
「そうか、君だったのかね。私が折角、入れ替えている最中のドッペルを途中で出したのは。そのせいで、ここまでするのに、時間がかかったよ」
「ってことは、あんたがあの時の」
「如何にも。これで余計に君は倒さないといけないね。松下君、さっさとやりなさい」
「はい!」
 そこで話は終わった。止まっていた女がまた走り出した。さっきよりも更に加速しているように思える。足が地面との摩擦に耐えきれずにずりむけて、血を滴らせているからだ。
「あなたには死んでほしいってマスターが言ってるのよ、だから、死んで!」
 飛んでくる連撃をなんとかやり過ごしながら、詩織も撃ちこんで行く。
「誰が死ぬかああああああああ」
 こういう時に、もうちょっと、家の道場で練習しておけばと後悔する。しかし、そうもいっていられまい。詩織は戦闘に集中した。
 この相手と詩織の決定的な差はなんだろうと考えてみた。それは恐らく、相手には痛覚がない、これに限るのではないだろうか。詩織が攻撃を受けて、着々とダメージを受けているのに対し、相手はいくら攻撃を当てても、ひるむことは無い。
 まるで映画に出てくるゾンビと戦っているみたいだと詩織は思った。まぁ、ゾンビはこんなにも機敏に動けないし、ゾンビ相手に後れを取るなんてそんな現実は認めたくない。
 腕が折れようとも、その折れた腕で攻撃してくる。折れて尖った骨が凶器のように、詩織の肌を掠めた。顔は血で真っ赤に染まり、もう女性としての形をなしていないとすら思える。
 闘っていて不意に涙がこぼれそうになる。攻撃をかわしあう中で詩織の心は悲しみに苛まれていた。
 ごめんね、ごめんね、ごめんね、謝罪言葉だけが頭を過ぎり、結果それが隙となる。
 ギリギリでかわしていた攻撃が顔面を掠めた、ひるんだ所を追撃されて鳩尾にヒットする。
「かはっ」
 思わず膝をついたところで、横蹴りが詩織の胴体を蹴りあげる。込み上げてくる吐き気に血を吐き出すと、なんとか体勢を立て直す。
 血を手で拭うと辺りを見渡す。大丈夫、男はこの闘いを余興か何かだと思っているらしい。男が動こうとしない限り、真子には被害は及ばないはずだ。
 肩で息をしながら前方の相手を睨みつける。この相手は、手加減や同情で勝てる相手ではないと再認識する。
「ごめんね、でも、私は負けるわけにはいかないんだ。まだ、守らないといけない人がいるんだから」
 最愛の兄の顔が脳裏を掠める。すると、興奮状態の気持ちが段々と静まっているのが分かった。これ以上にないくらいの冷静さを取り戻すと、拳を握りしめる。
「ケリをつけるわ」
 双奏鉄鎖を瞬時に両手に納めると地面を蹴った。よく、双樹が神滅宝珠を媒介にして、自分の能力を底上げしていくが、その感覚が今になって分かったような気がした。
 相手の攻撃がスローモーションで写っている。相手は次にこう動く、そのコンマ数秒先が読める気がした。女の拳を避けて、蹴りをやり過ごす。そのやりとりの中でついに完全に相手の懐に潜り込んだ。
 ――我流真髄荒命流、双奏鉄鎖、重の型、その一“葬連撃”
 脇にぴったりと当てた銃口から発砲。続いて、浮かび上がったところでもう一回撃ちこむと、宙に浮かせる。そのまま地面を蹴って空中に行くと一回転しながら踵落としをしてついでに追撃の銃弾を浴びせる。地面に身体がついたところで更に追撃の銃弾を浴びせ、着地したら、その身体を蹴りあげて、回し蹴りを加える。すぐにまた蹴りあげることで、最初のポジションまでもっていき、最初に戻る。それを相手が動けなくするまでする攻撃だ。
 女は何もすることが出来なかった。双奏鉄鎖によって、身体強化された詩織の速さは常人のそれを遥かに上回る速さだった。ほとんど、ぼうっとしているような間に終わるその連撃に、女は為す術もなく、地面にひれ伏す。
 起き上がろうとしても、身体が壊され過ぎて、起き上がることができない。それを冷酷に見下す詩織がいた。
「これで最後にしてあげるわ」
 そう言いながら詩織は終焉の撃鉄を起こそうとした。
「もうさすがにおいたが過ぎるな」
 しかし、それは為されない。撃とうとしたその時に、気配を更に二つ感じたからだ。すぐにその場を離れると、詩織がいた空間に攻撃が繰り出されていた。その二人とは、青い球体の中にいた二人だった。
「このドッペルは完成しています。壊されては困るんですよ。私も含めて、確実にあなたを殺すことにしましょう。もうちょっとすぐに片がつくと思ったんだがね。そろそろ、面白くない展開だ」
 詩織と向かい合うように男と新たに加わったドッペルの二人が対峙する。さすがに分が悪い。多勢に無勢というやつだ。今闘っていた女くらいの実力をこのドッペルがみんな持っていたとしたならば、恐らく、今の詩織では敵わない。
「万事休すってわけかしら」
 ジリッと一歩下がる。このままだと確実に、負ける。死を覚悟した。
「そうでもないよ!」
 思った時だった。大きな声が地下室に轟く。驚いて、その方向へ視線を合わせると、そこには今の声の主、鈴蘭、そして勝と双樹がいた。双樹は間にあったのだ。
 双樹は抜き身の神滅宝珠を構えながら詩織に言った。
「あんたは回りを見て無さ過ぎ。本当に、一人では行動させられないわ」
 いつもはむかつくその顔だけど、今の不敵に笑う双樹は心から信頼できると、詩織は笑った。
「うっさい」
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