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オンライン小説ブログ~青春文芸部~

「サークル執筆作品」
『縁堂へようこそ~真子の章~』


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2011.04.12  *Edit 

『発覚~真知れ、残酷という物語~』

 調査を始めて結構経った。詩織も双樹も事件が起こった場所などを中心に聞き込みへ励む。最初はネットや雑誌などを調べて、やっと聞き込みのポイントを絞るまでに至ったのだ。
 馬草団地の横を歩きながら二人は話していた。
「大学ないね」
「そうね、ここらへんにあるはずなんだけど……」
 ムームルマップを見ながら目的地を調べるが、どうやらその姿は未だに姿を見せないでいる。地下帝国でもないのだから、そろそろその御身を拝見したいところだ。しばらく歩くと前方に小学校の校舎が見える。今は使われていないようだ。ここをまっすぐ行ってしまうと、微妙にムームルマップが示した道からずれてしまう。さて、どうしたものかと思っていたときだった。
「あ、あれ! バスよ、バス」
 詩織が叫んで指を刺した方向には変に狭い道にバスがするりと姿を消したところだった。確かに双樹たちの行きたかった目的の大学の名前が書いてある。これは、あたりかもしれない。
「たしかに。行こうか」
「だね!」
 路地を入っていくと、左手には温泉施設があり、真っ直ぐ路地は伸びている。走っていくと、右手のほうになにやら建物が見えてきた。ビルのような、団地のようなそんな建物がひしめき合っている、そんな不思議な場所。なんだろうと思いつつ、さらに歩を進めてみて、それが何だか理解する。
 そう、こここそが、双樹たちの探していた場所だったのだ。
「わぁお、集合住宅みたい」
「そういうこと言わない」
 集合住宅とは言いえて妙だった。双樹が知っている大学のイメージとは遥かにかけ離れているからだ。もっとも、双樹は「場末の集合団地」と思っていたので、強く詩織に言えるわけでもないのだが。
 とにかく目的の場所に着いたということで、潜入を試みる。一応、大学ということで制服だと怪しまれてしまうかもしれないということを考慮し、今日の二人の格好は私服である。警備員がずっと仁王立ちしているので、少しだけ不安だが、こういうときは怖がると帰って怪しまれてしまうというのはよく言われることで、ドンと構えて二人は歩く。
 ドキドキドキと心臓が高鳴っているのは分かる。これが恋のトキメキならばいいのに、と詩織は妄想しながら門をくぐった。
 少しばかり急勾配な上り坂が続き、ウブンイエウンが見えてきた。現在時間は夕方の四時。だというのに、コンビには人が群がっていた。入り口からもう、人が多いのが分かる。飲み物の所まで列が伸びている。あれだけのレジがあるというのに、信じられない光景だった。
 二人はコンビニに入るのをとりあえず、諦めて摩云宇館という建物の一階にある自販機で飲み物を調達し、外のベンチに座ることにした。建物の中は変な茶髪やらで全身カスタマイズしたような集団がいるのでそこで休憩はできないと判断したのだ。
 今日は空も曇っていない。まだ四時なので、空は青く、気持ちがよかった。しかし、少しずつジメジメと感じ始めているのも事実で、気持ち悪いとも双樹は感じていた。
「そういえばさぁ」
 小気味の良い音を立ててプルトップを引き、詩織は自販機で買ったソーダをゴクゴク飲んでいた。プハァと親父並みに声を上げている。
 いつも思うことで、どういう風な教育を受ければ、あのように、炭酸飲料を一気飲みできるのだろうかと双樹は思う。いつもやってみるけれど、ものの数秒もかからないうちにギブアップしてしまう。詩織が買っているのを見てなぜだか買ってしまったソーダを見た。おいしそうに水滴を流している。
「何?」
 詩織の言葉を聞きながらプルトップを引く。開けるときの音が爽快感をかもし出していて、双樹はこの音が大好きだった。開けたところで、口にセットして飲むことに集中してみる。私にできないことはないと言い聞かせることにした。よって、詩織の話は実のところ、ほとんど聞いていなかったりする。
 オンユアマーク。
 心で唱える。そして……一気に流し込んだ。
「!?」
 あれ、死ぬ?
 なんと言う邪悪な衝撃だろう。喉が沸騰しているみたいにウヨウヨして、息継ぎができなくなって。これは人間の飲むものだろうかと本気で疑ってかかりたくなった。
「あのさ、これからのこと……ってあんたなにやってんよ!」
「なん、うえ、ごっほ、な、い……ごほ、ぶふぉ」
「はぁ。なれないことするから」
 アハハハハハと高笑いの詩織が恨めしい。睨むついでに、足をつねっておいた。
「いったぁ。何すんのよ!」
「さぁ? 私は何もしていないし。で、何、聞きたいことって」
 怒って、すごい剣幕になっている詩織をよそ目に、話を進めておく。恥ずかしい気持ちやら色々あるので、ごまかしていく方向に決めた。
「ったく。分かったわよ……あのさ、聞くって結構難しくない」
「ああ、そのこと」
 双樹は炭酸によって、一瞬、ここに来た本来の目的すら忘れてしまいそうになっていたが、ここまで来て目的を思い出した。そうだ、自分は事件のことで聞き込みに来たのだと。
 確かに、来て分かったことがある。なんと言うか、突撃して何とかなるほどの空気をここは出していないことに。このままいきなり話しかけても「はぁ?」となるだろう。そしてそれからの神隠しのことなど聞いたらさらに「キモ」といわれること請け合いだ。そんなこといわれたら精神的にダメージがでかいと予想された。
「確かに私も考えていたところよ」
 双樹が冷静に現状を述べると、詩織の「冷静に言うなよ!」と即座に突込みがあった。詩織に正論を言われるとなぜだか悔しい。
 しかし、ここにいては何も変わらないこともそれまた正論なわけで。ならば聞くしかないだろうと双樹は思い切って立ち上がる。心に決めた。さぁ今から行くぞと。
 まずは最初に、ウブンイエウンの前で仲良くから揚げスティックを食べている女性三人組に話しかけることにした。


 事務所に戻ると二人はソファに飛び込んだ。ぐてーっと死人のように横になる。
「おいおい、どうした。死にそうじゃねーかよ。ほら、コーヒーだ」
 勝が二人を見ると、気を利かせてくれてコーヒーを持ってきてくれた。大きめの氷が二つ入っているカフェオレだ。疲れた体にはちょうどいい飲み物だろう。
「ありがと、勝っち~」
「ありがとうございます」
 ストローに口をつけて、ゆっくりと体の中に染み込ませていく。疲れた体に勝のいれてくれたコーヒー、なんと贅沢なチョイスだろうと双樹は悦に浸っていた。
「詩織は、勝っち言うな。俺は副所長サマなんだぞ」
「はぁ、でって言う?」
「お前、この野郎っ」
 横ではいつものやりとりが展開されていた。詩織はイマイチ、目上に対する態度がなっていない。勝に「勝っち」と言っては怒られているのをよく目にした。それでも本気では怒っていない。詩織には、どこかそういう愛嬌があって、マスコット的な可愛さを持っていた。それは詩織にとってすごいステータスであるだろうし、双樹もうらやましいと思う一面でもある。
 普段から女の子をできていないな、という自負はあるのだ。もっと可愛く対応できたら、もっと女の子らしくなれたらと何度も思ったものだった。比較的無愛想、理論的思考で疎まれるキャラクターだと思っていた。容姿だって詩織のほうが可愛いと思われるような顔立ちだろう。
 カラン、とコップの中の氷が崩れたところで、少しネガティブになっていた頭を現実にもどして、事件のことを考えることにした。グダグダしていても仕方がない。
「さて、詩織、考えるわよ。今日の収穫をまとめてね」
「やめてよ、勝っちぃ……はいはいはひ、副所長様~……う? 分かったわ~」
 はいはい、終りね! と勝を追い返して詩織も起きた。二人はホワイトボードのとこまで移動すると、写真やらプリントアウトやらをした資料をマグネットでとめていった。
 ネットなどで氾濫している情報、雑誌などには載っていないか、そして今日聞き込みをしてきた結果など書き出して、貼っていく。一通り並べると二人でそれを睨む作業が始まった。
 双樹は共通点がこの中に隠されていないかというのを探してみる。なるほど、量が多いせいか見ているだけで目がくらくらしそうだった。それでも頑張ってみてみるとアウトラインは分かってきているような気がするのだ。
 それは範囲のこと。雑誌などには事件のことはあるものの、神隠しとしての噂などには触れられていないものが多いように見受けられる。たまにゴシップ系では取り上げられているが、その内容は飛躍しすぎていて、信じるには値しない。某大型掲示板には地域色のある話題として取り上げられているものはある。そしてやはり、噂を聞いたなという人たちに共通するのが、噂の発信源というやつだ。
 地図と照合しながら見てみるとよく分かる。主な発信源をまとめると、市内を出ない。そして凧旗不動や窯センターや啓関蔵ヶ丘などを区切りにして円ができている。たまに地方などにも噂が存在するが、これは在校生が広めたものとして仮定すると変ではない。仮にその駅などを中心にした場合、中心となるのが、
「やっぱり……T京大学か」
「ふえ? 何か分かったの?」
 資料を読み比べていた詩織が顔を上げた。双樹は自分が考えていることを告げる。すると、
「ふむ、じゃあ、そこが怪しいのねぇ」
 と身を乗り出して、地図を凝視する。
「なんだ、何か分かったのか」
 勝が来て、勝にも双樹は考えを告げる。勝は腕を組んで考えていた。
「そうか。まぁそれも一つの道だろう。確かに証拠とか根拠って大事だぜ? でもな、それ以上におかしい、っていう疑問が必要なもんでさ。自分に従ってみるのもいいんじゃねーかな」
 にしし、といつもの人懐っこそうな笑い方をされると安心する。自分の考えや疑問に自信が持てないでいたが、少しは信じてもいいんじゃないかと思うようになった。
「そう、ですね。やってみます」
 勝が笑うと自然と笑顔になれる。最近わかったことだ。双樹は気を取り直して地図をみる。証拠としては相当根拠がない。事実無根といわれてしまえばそれでおしまいだ。資料を見たり、その直感で怪しいと思ったらこのエリアができた。これが無駄でないと信じたい。
「よし、やっぱりここを調査してみよう。分かった? 詩織」
「うい。分かったわ。そうしましょう。早く終わらせてすっきりしたいもんね~」
 ――願わくば事件が早期解決しますように。簡単に事実にありつければいいが、それがどうなるかは、神のみぞ知る、ということだろうか。
 双樹は自分が一瞬でもそう思ったことで自嘲の笑みを浮かべる。神様に頼るなど、最大限の皮肉である。今は手元にはない神滅宝珠が不満にうなっているように感じた。
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