オンライン小説ブログ~青春文芸部~

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「サークル執筆作品」
『縁堂へようこそ~真子の章~』


1

2011.04.12  *Edit 

『噂~非日常こそが日常となりうるものを~』

 こんな噂がある。二十号館の怪。今は使われていない校舎が大学内には存在して、それがどうして使われていないのかというお話だった。そこでは、昔殺人事件があって、それで不慮の死を遂げた女性の霊が夜な夜な徘徊しているという、よくありそうな怪談話だった。
 葛城真子はその話をいつもの伝手で入手し、ある日、夏の夜に美術部の居残りでそれを体験した。もう死にそうなほど怖い思いをして、しかし、やめられずに真子は今日も怖い話を収集し続ける。なぜ集めるのかと聞かれても、理論的な返しはできないだろう。真子にしてみれば、そういうときに感じるゾクゾク感やスリルを楽しむためのだから。
 そんな真子は飯時が少し過ぎたあたりで学校に到着した。今日は三時間目からの授業ゆえである。目的の教室に着くと、いつも座っているあたりに腰を下ろした。教室内には飲食禁止の張り紙がしてあるにもかかわらず、大勢の人が食事をしている。もう授業が始まる時間だけれど、この授業の先生は十分は必ず遅刻してくるので問題はないのだろう。
 ぐてーっと腕を枕にしてぼうっとしていると、すぐ隣に空けておいた二つ分の席に人が座る音がする。気だるそうにそっちを見ると、そこにはいつもの二人がいた。
「うむ、重役出勤ね、真子」
「うらやましいなぁ真子ちゃんはぁ」
 小学校からの親友で、津島琴奈と小川菜柚である。二人はこの曜日、真子とは違い二時間目から授業がある。故にとりあえず、席取りできたらしておくというのが専ら真子の仕事だったりするのである。
「おはよっす」
 真子は眠い目を擦りながら挨拶した。実は昨日、ホラービデオの会を一人でオールナイトしていたのだ。はっきり言って、心霊写真のやつなんかはどこが修整でどこが本物などわかってしまうから怖さは半減する。そういう時はB級ホラーなどを見て至高の時間とするのが真子流なのだ。
「またホラービデオかよ」
「うむ。そうなのですぅ。ねみぃっす」
 ほぼ話を聞き流している状態でいると、今日もやはり十分遅刻して入ってきた先生が教壇にたった。そこでやっと頭が働く気になったらしく、そういえば忘れていた生徒証のIDを読み込ませる作業に向かった。もう遅刻扱いだが気にしない。何回か近くのT央大学にこの時間を使ってサボりランチしていたために何回目かの授業からかそういうのはカウントしなくなった。
 席に戻る。とっくに勉強道具一式を机の上に出して聴く体勢になっている二人を見習って、真子も準備をすることにした。リュックサックの中に手を突っ込んでまとめて手に取ると、その中からノートを探し当てる作業に移った。
 しかしおかしいことにいくら探しても見つかる気配がない。さすがに焦った真子はさらに詳しく中身を探ることにした。
「……ないんだけど」
 ぼそりと現状報告してみた。後ろに座っている女子グループがなぜだか真子を見た。続いて琴菜が反応して聞いてくる。
「ないって何が」
「この講義のノートよ。せっかく上手く描けた落書きがあったのに。まじでありえないわ」
「本当にないの? 挟まってたりとかするんじゃないの?」
「ないのよ。探したからこういう結論に達したわけっす」
 はぁと少し大げさにため息をついた。実際、この前に描けた落書きはとても出来がよかったのだ。だから、今度構内にあるウブンイエウンのスキャナでスキャンしようと思っていたのに。見事に真子の計画が崩れていく。
 落ち込んで、授業を聴く気になれなくなった。それとなく口にするとすかさずいつものことじゃないのと突っ込まれた。少しだけウルッときた。
 すると菜柚が真子の肩をトントンと叩く。菜柚を見るといつものほんわかしたようなゆるい笑顔がそこにあった。
「私ねぇ、そういえば思い出しの。真子ちゃん、この前、同じサークルの人だとかいう人に貸してたじゃない」
「あ、そういえば」
 先々週に同じ授業をとっているサークルの人間に渡した覚えがあった。最近サークルに顔を出していないし、先週はサボってT央大学のランチを食べに行っていたから思い出せなかったのだ。
「……貸したままよ。はぁ、面倒だわ」
 顔を上げてざっと見渡すと、そこに貸した友達はいないと判断する。その日はその講義の板書はあきらめることにした。後で見せてといったら肉まん一個といわれて喧嘩になった。
 時間は過ぎて、やがて帰る時間になる。登校の時間こそ違うが、この曜日は終わる時間帯は同じなのだ。講義を終えるとウブンイエウンの前で待ち合わせをする。ウブンイエウンの前まで列が伸びているのを確認してから、店内に入り、チーズ揚げちゃいました、とから揚げスティックを購入し、その長い列に加わる。バス停に一番近い十五号館が気のせいかやけに遠くに感じた。
 真子がチーズ揚げちゃいましたを食べていると、後ろでお茶をグビグビしていた琴奈が真子の手元をジーっとみていた。
「あんたが食べてるの見てるといつも思うけどさ、そのお菓子って本当にチーズ揚げてるお菓子なの?」
「んなわけないじゃん。チーズ風味のお菓子ってだけだよ~。百円コーナーに売ってるし、おいしいから好きなんだよね~」
 もふもふと真子は幸せな時間を過ごしていた。このお菓子は名前でよく間違われるが、スナック菓子のチーズ味のようなもの。ポテトチップスにチーズ味の粉末がかかっているようなもんだと思ってもらえればいい。名前も名前でお茶目な感じが真子には好感が持てた。
「おいしぃですものねぇ」
 菜柚もこのお菓子は好きだ。同志には分け与える真子だから、菜柚にも「ねー」といいながら奮発して三枚渡した。チーズ揚げちゃいましたを食べ終えて、から揚げスティックを食べているころにようやくバスが見える位置まで列が進む。
 待っているだけで講義を受けているような気分になるくらいに面倒である。
 それから三本ほど後にようやく座れるくらいの位置で列がとまった。これなら次に来るバスでは確実に座れるはずだ。立たないといけない位置じゃなくてよかったよとニコニコしていると、列の後方から日焼けサロンで焼いたようなこげ茶の肌の色をした女が歩きずらそうなヒールを履いて走ってくる。そのまま、凧旗不動行きのバス停を越えて、窯センターや啓関蔵ヶ丘行きのバス停に行くのかと思われたが、なぜだか先頭あたりで止まる。そこには同じく焦げ茶色の肌をした男がいた。
「あーねぇねぇ、お願いなんだけど、私のこと列に入れてくれない?」
 うむ、そこはもう断るところだよな、と思いながらその光景を見ていた。後ろを見れば分かるとおり、今の時間帯は忙しいし、人の数が半端ないのだ。
「えーいいぜー」
 しかし、常識とは常にあらゆる人間に用いられるものならば、トラブルなど起きないのだろう。これも同様で、なんと、そいつは列に入れてしまった。しかも非常識は続く。
「ありがとー、みんなぁ、いいってー」
 さすがに噴きそうになった。ほかの二人も同じらしい。
「はぁ!? 一人じゃないの?」
 そうだ、そこで疑問に思え、後ろに返せと真子は競馬で券を片手に馬を応援する気持ちでその会話を聞いていた。
「うん。いーち、にーい、さーん、しー、ごー、ろく。六人いるー」
「マジかよー。いいぜ、入れよー」
 思わずから揚げスティックを落としそうになってしまった。あれが同じ人間なのかと思うと、背筋が凍る勢いだった。
「なんだよ。ありえねぇ」
 静観主義の琴奈もさすがに顔を引くつかせていた。
「さすがだよね、この学校」
「でも、真子ちゃんも同じ学校だよぅ」
「ぐはあああ、あんなな脳細胞まで腐ってるようなリア充もどきと一緒にしないで頂戴! あいつらみたいに頭は沸いてないわっ」
「おいおい、聞こえてるぞ……」
「はう!?」
 思わず不本意な言葉を言われたために、前を見てみると、さっきのこげ茶集団。名前は知らないので、クリーチャー集団と便宜上名づけることにして、が真子の方を見ている気がした。口を押さえてから菜柚の方に向き直る。数十秒ほど息を止めてから手を離した。今頃押さえても意味がないことに気づいたのだ。
「はう……危なかったっす」
「いやいや、あれはかなりの確立でアウトだろ。まぁしかし、あいつらみたいなのはさっさと最近よく聞く神隠しにでもあっちまえばいいんだよなぁ」
「そうねぇ、もう二度と帰ってこないで欲しいわぁ」
 菜柚と琴奈は地味にひどいことを言いながら頷きあっていた。頭が沸いているとか大声で言っておきながら、この二人は人間として危ないわとか思っていた真子には一つの疑問符が浮かび上がる。
「ねえねえ、神隠しってなによ」
「あん? 神隠しって言えばあれだよ。昔からからな……」
「違う。私が聞きたいのは、よく聞く、の方っ」
「ああ、あれか。あれはな」
 琴奈が説明を始めようとしたそのときだった。真子たちが乗るはずのバスが到着した。先ほどの集団のせいで座れなくなり、ついでに人が混みこみなので、琴奈から続きを聞くことは、バスの中では到底無理そうな話だった。
 間もなく凧旗不動にバスが到着し、バスを降りる。すると、頬に冷たいものが落ちてきた。もう時期梅雨が来る。その前祝でも雨雲がしたいのだろう。最初は小粒の雨が見る見る大きくなり、土砂降りになっていた。
 真子はバスターミナルから空を見上げて、呆然となる。鞄に手を突っ込んで、確かに傘が無いことを確認した。
「早く帰りますか」
 呟くようにぼやくと、後の二人も頷いた。

 場所は変わって駅改札口。
「まじかよ」
 と、琴奈が開口一番そう告げた。三人の前には臨時の看板が置かれている。内容を読むところによると、真子たちが帰る方面で電車が完全に止まってしまっているという。今のところ復旧の目処は立っていないとのこと。ここで待っていても寒いだけだし、どこかに入ることになった。
 とりあえず、駅の中を散策してみるが、ロープライスで暇をつぶせる学生にやさしいお店は案外少ない。本屋があったが、ここで時間をつぶせるほど、真子たちは熟練者ではなかった。
 というわけで、お馴染みの場所に行くことにする。駅を出て雨になるべく濡れないように走ること三分ほどのところにそこはあった。信用金庫の向かい側、ジャンクフードのお店、アマドバルドである。
 店内は雨宿りの人で結構にぎわっているが、席は三人座れる場所を確保して注文をしにいく。真子はアマドバーガーと水を頼んだ。席に座って二人が来るのを待つ。しばらくして三人がそろうと、しばし談笑の時間になった。
 一通り話してふと窓から外を見るが、依然として止む気配はない。これは本格的に面倒なことになったと真子は思った。
「ねぇ、さっきの続き聴かせてよ」
 真子はアマドバーガーを頬張りながら言うと、琴奈はバスに乗る前に話の途中だったことを思い出し、そうだねと呟く。
「よし、これはさ、友達の友達から最近聞いた話らしいんだけどね……」
 琴奈の話はこういうものだった。
 最近のことだ。この近辺で連続的に起こる行方不明事件が起こっているらしい。最初の事件が起こったのが、一ヶ月ほど前だ。手口は分かっておらず、犯人の顔すら分かっていない。何も手がかりが見つかっていないのだそうだ。突然消えて、そして不可思議なことに、ある一定の期間をおくと、その人は戻ってくるのだという。戻ってきた相手に聞いてみると、何のことだかさっぱり分からないというのがその面々の言葉なのだそうだ。その人曰く、「普通に過ごしているだけ。今日も起きて、また普通に生活をして、その繰り返し」つまり、事件のときの記憶はなく、本人からして見れば普通に寝て起きたときにはその日であり、行方不明になった実感すらないのだ。逆に質問されて、自分が行方不明になっていたことに気づくらしい。
「え、それって、本人は起きて日常を過ごすけれど、実際はその寝ていた期間が行方不明になっていた、ということ?」
「そのとおり。おかしな話だろう、行方不明になる前に寝て、その期間もずっと寝ていたなんて信じられない話しだしさ。もしかしたら誰かに攫われて監禁とかもされてたのかもしれないのに、それにも気づいていないとか、ありえないと私は思うのよ」
 琴奈はうんうんと頷いた。
「この話の共通性としてはぁ、忽然と消えて、一定期間を置いて必ず戻ってくるってところなのぉ」
 菜柚がそれに補足を加えて、ポテトをかじった。
「そう! で、この話のあまりに掴めない内容からついた名前が“神隠し”ってわけよ」
「ふぅん」
 妙な話だと真子は思った。というか、怪談・都市伝説マニアの真子としては、このうわさを知らなかったことに後悔していた。自分としたことが、かなり出遅れている。
 何とか混ざりたい。私も知ってたよ、とか何食わぬ顔で学校のみんな、オカケンの人にも話したいが、情報の新鮮度が低いにもほどがあった。真子がそういうことを考えているときだった。
 菜柚の携帯が鳴り、それはどうやら電話のようで、通話が終わると真子たちを見てにこりとした。
「ねえねえ、これからお母さん迎えに来るんだけどぉ、一緒に帰るよねぇ」
 傘がない真子にとっては朗報中の朗報である。情報の新鮮度とかの思考は彼方に消えて、帰ることのできる安堵感が体を満たす。すぐに来れる距離にいるというので、もうアマドバルドを出ることにした。
 外に出る。未だに降り続く雨は湿った空気を体にまとわりつかせるから嫌いだ。空の見上げても雲しか見えないのは少しさびしいことだと思いつつ、真子はその場を後にすることにした。
 無差別に雨は降り続く。今日のうちはどうやら晴れないようだった。
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