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オンライン小説ブログ~青春文芸部~

「サークル執筆作品」
『縁堂へようこそ~真子の章~』


プロローグ

2011.04.12  *Edit 

『発生~宵の秘め事~』

 それは満月が綺麗な夜だった。夜も更けたころに二つの影が宙を舞う。常人には理解しがた高さを悠然と飛び、そのスラリとしたシルエットは美麗さを帯びていた。着地したのは、とある廃ビルの屋上である。着くと、慎重に歩を進める。
 シルエットの一人、近衛双樹はポケットから設計図を取り出した。指でトントンといくつかのポイントを指差していく。
「怪しいのはここら辺かしら。詩織は、こことここを探して」
 双樹はその中でも二個三個ほどポイントを絞ると、もう一人のシルエット――真木詩織にそう命じた。詩織は、ヘアピンで髪を止めると、面倒そうに「はぁい」と返事をした。
「くれぐれも、ヘマしないでね」
 そんな態度が気に入らない双樹は少し語気を強めて詩織に言う。詩織はムカッとしながら、べーっと舌を出すと、ビルの闇へと消えていった。うんざりしながらそれを見送ると、双樹も歩き出す。今回の仕事も速く終わればいいがと思いながら。
 今回倒さないといけないターゲット数は一。幸いなことに少ないから早く終わらせたい。明日までに提出の宿題を終わらせないといけないからだ。
 それにしてもと思う。なぜ最近、詩織と組むことが多いのだろう。それは所長の意向ゆえに逆らうことはできないが、詩織とは馬が合わないことはわかっているからできればそういう事態は避けたいと思っている。相手もそれは同様のようで、仕事を引き受けたときも、組み合わせが言い渡されてあからさまにいやな顔をしていた。どうして双樹のことが気に入らないのかというのはまぁ、理由はわからないでもない。あの男が原因だということはわかっている。
 早速ビルの中へと足を踏み入れた。踏み込むと、ほこりが舞い上がる。ビルが使われなくなってずいぶん経つからそれも仕方がないことだろう。ここは使われなくなってからずいぶんと経つのに、なぜだか、取り壊されない。もちろんそれには理由があり、専らそれは取り壊そうとすると起こる怪異が原因である。
 正体不明の何かが機器を壊したり、なぞの事故が起こるなど、よく怪談にありげな事故が起こって結果的に誰も手をつけなくなった。しかし、また再建計画が立ち上がり、事務所に依頼が来たというわけだ。
 蛍光灯は電気が通ってないことからもちろん、使えない。だから手元にある頼りない懐中電灯を使うほかない。スイッチをオンにすると、前の狭い視野が照らされた。ホコリがかなり反射して見えづらいが先に進んでいく。階段を下りてフロアに出ると、廊下は月明かりに照らされていて少し見えやすくなった。このために満月の今日を選んだのだ。
 闇雲に探しても埒が明かないので、とりあえず設計図を見ながら、チェックしたところを探していく。ターゲットの好んでいそうなところは今までの経験則から少しは特定ができるのだ。
 詩織に言った以外でのポイントは三つほど。進んでいくと、その二つは空振りであった。
 最後の一つはフロアを二つほど下ったところにある。如何にもな扉が前に現れて、猛烈に感じる瘴気のようなものが不快に思えた。その一角だけが次元を切り離されたように歪に見えて、双樹はその前に立ち止まる。
 無線をオンにすると呼びかけた。
「こちら双樹。詩織聞こえるか。オーバー」
 数秒も経たないうちにガビッと一瞬ノイズのような音が聞こえると、応答がある。
『こちら詩織。もう! 携帯でいいじゃない。私、これ嫌いなのよ! オーバー』
「うるさいわね、携帯なんて通じなくなるでしょうに。だからこれにしたのよ。それにせっかくある通信手段なのに、わざわざ携帯にする意味がわからないわね。オーバー」
 冷たい視線を無線に送りつつ、双樹は応答を待つ。一分くらいの間を空けてそれはきた。
『繋がらないって、もしかして、見つけたの。オーバー』
「ええ、そのもしかしてよ。私はこれから突撃するわ。詩織も私のところに至急追いついてきて頂戴。オーバー」
『わかったわ』
 そういうと、ブツリと会話が切れる。無線を元の位置に戻すと、その扉をにらみつけた。ここが終われば、仕事はもう終わりなはずだ。早く家に帰って課題をやりたい。
 大体、所長はいつも、突然すぎるのだ。しかも、突然すぎる召集の約半分以上が夜中。次の日にも学校があるというのに、悪意があるとしか思えない召集ばかりだ。
「早く終わらせて、帰るわよ」
 双樹は目を閉じて気持ちを集中させる。気持ちの線を一本の鋭い物にして、腰から小太刀を取り出した。そして目を開けたかと思うと、一気に地面を蹴り上げた。その力を使って、扉に突進をする。
 軽く、地面が揺れるほどの音を上げて、扉が前倒しにされると、双樹は飛び込んで小太刀を構えて周囲に注意した。かつては部署の一つとして利用されていたのだろう。だだっ広いそこはデスクがないために伽藍としていた。そしてその一角にそれはあった。
 ――見つけた。
 人間が一人、青い球体のようなものの中に入れられているのが目にはいる。用心深くそこに近づくと、確信を持った。これはドッペルを生成中なのだ。
 双樹が関わるというだけで依頼のジャンルなど限られている。そして、ここにドッペルを生成中の証拠があるとするならば、双樹の求める相手もここにいるというわけで。
 ドクンと胸が高鳴る。早く、早く出て来いとそう願った。まるで愛しき恋人にでもあうような気持ちであたりを探す。この青い球体を作った張本人がどこかにいるはずだからだ。
 ガタッ。
 何かを踏む音。そして人の気配――。
「そこかぁっ」
 双樹は視界に入る前に、小太刀を右に薙いだ。小太刀が風を切って、そのまま相手に当たるはずが、相手がそれを避けて空振りに終わる。舌打ちをして、また体勢を立て直すと、その時点できちんと相手が把握できた。
「あれ、詩織?」
「あれ、じゃないわよ! あんた私を殺す気!?」
 おかしい。双樹は思わず首を傾げる。たしかにあれは知っている詩織の気配じゃなかった。だからこそ、ためらいなく小太刀を振ることができたのだ。しかし、今目の前にいるのは明らかにいつもの詩織だ。真木詩織だ。
「ごめんなさい、私、どうかしてたわ」
「どうかしてた、じゃ、ないっわよっ」
 詩織は怒り狂ってナイフを振り回す。しかし、すぐに、動きを止めて目を細めた。
「ここ、いるわ」
「やっぱり、詩織も感じるのね」
「当たり前よ。実戦経験は結構積んでるつもり」
「そう……」
 また集中を練り直す。詩織を切りかけたところで一気に霧散してしまった。双樹は我ながらそれくらいで途切れてしまう集中の糸に呆れながら小太刀を構えた。
 どこにいるのだろう。あたりを目だけでなく、聴覚で嗅覚で探っていく。気配も張り巡らせるが、双樹のそれは所長ほど修練されていないために穴だらけだった。
 どこにいる……。
 双樹がさらに集中を強めようとしたそのときだった。
「双樹っ」
 詩織が叫ぶ。その瞬間に双樹は前に走り出していた。すぐ後方で地響きがして数歩先で立ち止まって、後ろを見た。そこには先ほどあったものがなかった。
 先ほどあった地面がなかったのだ。
 戦慄が走る。双樹は目を見開かせて、次の瞬間に唇をかむ。
 そこにはもう誰もいない。完全にあしらわれているのだ。屈辱に拳を握り、そして、叫んだ。
「絶対に、許さないっ」
 右手を突き出す。心の中で言葉をつぶやいた。
 ――次元の鎖よ。戒めを解き放て。
「出て来いっ、神滅宝珠」
 するりと何もない空間に突然、十尺はあろうかという、野太刀が姿を現した。漆塗りが下地で、鞘には禍々しい程の模様が金細工で施されている。しかし、その美麗さとは反対に至る所に傷ができている。鍔は無いわけではないが欠けていて、柄は漆黒で、飾り気がない。
 双樹はそれを手にすると、背中に背負い込むように柄を持ち、一気に抜き放った。乱れ刃が鈍く光を放っている。
 抜き放つと目を閉じた。この刀を抜くことで、双樹の第六感は本来の約三乗ほどになる。目を閉じて、意識をクリアにして、そして瞬時にその場を特定した。その間、約十秒ほどだった。
「詩織、私の言うとおりに動きなさいっ」
「ええ!? わかったわよぉ」
 すぐさま、詩織に指令を送る。部屋の隅、そこにやつはいる!
「私から見て、右の方向、部屋の隅、上側、動きを止めてっ」
「了解」
 双樹が叫ぶと、詩織は両腕を振り上げた。それと同時に叫ぶ。
「双奏鉄鎖!」
 両手が一瞬の光を放ち、そして、二挺の拳銃のようなものが収まった。しかし、その見た目とは一般で言う拳銃とはまったく異なり、シルエットがそれっぽい。ただそれだけだ。
 蹴りだして、詩織は照準をさだめる。
「荒命流衝術、影縫いっ」
 構えた銃口から放たれた二つの黒い閃光は真っ直ぐに双樹の言った方向へと飛んでいく。そして、捕らえた。
「何っ」
 捕らえられた何者かが呻いた。ボイスチェンジャーに当てたような声だった。
「捕まえたわ」詩織はにやりと笑うと、そのまま駆け出す。
「ちょっと、あなたの技じゃ……」
 双樹が言い終える前に、詩織は走り去り、そのまま追撃に移った。
 ふわりとジャンプして、相手に肉薄する。徒手空拳から技につなげていった。
――荒命流衝術、激の型“双爆”
 構えた二つの銃口から、ほぼゼロ距離で、詩織の力を込めた弾丸を撃ち込んだ。反動をバック宙で殺すとそのまま派生させ追撃する。
 ――荒命流衝術、派生“奏爆”
 相手の間接があるだろう場所に的確に撃ち込む攻撃。その滑らかな動きはまるで音楽を奏でるが如く。
「っち」
 相手が確実に、ダメージで体勢を崩した。そこに詩織はフィニッシュをつなげる。
 ――我流真髄荒命流、双奏鉄鎖、終の型、簡易式“双奏粉塵”
 二挺構えた銃をライフルを構えるように一直線に構えると、まるで、合体したかのようになり、長身の銃のシルエットへと変貌する。そこに目一杯込めた詩織の力を注ぎこみ、そして、発射。
 黒い爆発が標的の中心で発生する。相手だけを的確に飲み込むような攻撃は、当てられた相手に対して確実に深手を負わせるはずだった。
 なのに。
「ぐは、ちきしょうめがあああ!!」
 ターゲットが一回ひるんだだけで、すぐに立ち上がる。そのシルエットから暗闇に初めて確認する相手の目のような所は怒りにギラギラ光っているように見えた。
「うっそ」
 詩織は目を丸くして、立ち呆ける。行動や思考が一瞬すべて、止まってしまった。そして、それが命取りになるのだ。相手が腕を振り上げる。無造作に振り上げられた腕が、詩織を横なぎにした。
 ぎしぎしと骨が嫌な音を上げて、耐久力の限界を超えそうになるところを身体を無理やりそらしてかわすことに成功した。身体を転がして、やがて回転が止まったところで立ち上がろうとして、失敗した。
「あっれ、立てないんですけど」
 詩織は膝をつく。そして既に眼前へと移動していた敵を見上げることになった。次の行動に移ろうと移動していたのだ。こんなときなのに、なぜだか、相手の姿がわからない。シルエットだけ、いや、実体としての容姿を相手は持ち合わせていないのかもしれない。影だけが見えているような、かろうじて人間の姿だということだけわかるのだが、それまでだった。
 やがて、相手の攻撃は、すぐに詩織に届くことだろう。そして、やられてしまうのだ。
「くっそぉ」
 意識が途切れそうになったその瞬間、目の前を別の人影がよぎった。
「あなたの火力では一回の連撃では無理、と言おうとしたのに……自滅かしら」
 そこで、詩織の意識は暗転する。
 それを見届けたところで双樹は相手を睨みつける。
「悪いけど、こいつみたいに私は甘くないわよ?」
 そういうと、手に持った神滅宝珠が双樹の気持ちに呼応するように、鈍く揺らめいた。
 今まで詩織の戦い方を見ていてヤキモキしていた。自分ならばこうできる。自分ならば、あそこでこう切り込んでいたと。つまり、この状況を楽しみたいと思っていたのだ。遅々とした戦いしかできない詩織にイライラしていたのだ。普段から自覚はしていた。近衛双樹という人間は戦いの中に己の楽しみを見出していると。戦いの中でのみ、本当の意味で自分は輝けるのだと。
 だから、今現在立たされている死に近いこの場所も、ただの娯楽の一部としか考えていないのだ。自分が死にそう、その現実はフィルターがかかったようにひどく曖昧で実感は麻痺していた。
 少しばかり、いきなり双樹が眼前に現れたことで驚いていた相手だが、すぐに腕を振り上げる。そして振り下げた。重量のありそうな攻撃は、本来ならば、眼前の双樹を一薙ぎして肋骨を粉砕しながら吹き飛ばしていただろう。しかし、その攻撃は、双樹を僕撃することは叶わなかった。ひらりと華麗に受け流し、一気に加速。次の瞬間には、敵のすぐ目の前へと迫っていた。相手の攻撃とはあの重量による破壊力はあるのだろうが、そのぶん、機動力・繊細性が欠けている。故に先を読むことは少なくとも双樹にとってはたやすい。
 十尺もあるような刀をまるで、ないものとするように軽やかに動く。空中で身を翻して、そっと刀を構えた。
 ――荒命流剣術、“虚無僧”
 刀を構えてスッと横に一振り。その瞬間に戻すという居合いの特性を利用する。ちょうど最初の位置に戻したところで、地面に足を着いた。そして、同時に、相手も地面にひれ伏すことになる。
「な、なに」
 相手は驚きに目を見開く。いや、これは影だけのような存在の相手には不適切な表現かもしれないが、相手が驚愕しているのはわかった。
 双樹は無表情で剣先を相手に向けた。相手が一歩後ろに下がる。それを一歩追い詰めた。
「これで最後にしましょうか。早く帰りたいの」
 スッと構えに入る。構えに入ったまま、小太刀を片手で相手に投げた。
 ――荒命流剣術“影縛り”
 相手の動きがこれで止まった。この技は元々荒命流の技で、これがアレンジされた形が亜流の影縫いなのだ。
 双樹は続いて仕上げの段階に入る。一撃の威力がどうしても小さくなる双奏鉄鎖と違い、双樹の神滅宝珠は一撃必殺の剣である。それゆえの長さであり、そのための流派だ。
「我が神滅の錆と化せ」
 ――我流真髄荒命流、神滅宝珠、終の型、その一“神ノアギト”
 双樹の力を宿した刃を振り上げて、思い切り力を乗せて振り下げる。光に包まれた刀剣が無慈悲に相手を粉砕する。かつて神に歯向かうために研究された技のひとつである。
 放った技は見事に、相手に直撃し、そしてそのまま押しつぶされた。双樹が刀をどけると、そこにはもう何もない。砕けた地面があるだけだった。
 しばらくはそのまま放心する。敵が来れば今の状態ならば察知することは容易だろう。だから、もうしばし、剣を振り上げた余韻に浸りたい。今回の戦いは戦闘とすら呼べないものだろう。一方的に相手を捻じ伏せる、双樹の得意とするスタイル。命のやり取りも嫌いではないが、今は状況が状況な故仕方がないことだろう。早く家に帰りたいのだ。
 手を離し、神滅宝珠は地面に落下する途中で空気中に姿を消した。一息つくと、後ろで小さく声がした。振り返ると詩織が起き上がるところだった。
「んあぁ、あう」
 詩織は上体を起こすと頭を振った。目をこすって立ち上がる。
「おはおー」
「じゃないわよ!」
 一応、起き上がりの挨拶をしている詩織に鉄槌を下した。まっすぐ振り下げられた拳骨が、上手いこと詩織の頭の中心に命中する。思い切りの良い音が聞こえたかと思うと、「くぅ」と涙を流しながらしゃがみこんだ。そして、キッと双樹を睨んだ。
「なぁにすんのよ! 怪力女っ」
「ふん、あんな相手に遅れをとるあなたが悪いわ」言いながら、双樹は先ほどの青い球体まで歩く。小太刀でスッと切れ目を入れた。すると、まるでシャボン玉が割れるように青い球体は割れてなくなる。そこには中に閉じ込められていた女性がいるだけだった。それを担ぐと小太刀を納める。
「ったく。あんたは下品よね」
 双樹は出口へと歩き出すと、後ろからついてくる詩織が文句を言い始めた。
「そう、よかったね」
「ふんだ。兄さんとは大違いよっ」
 詩織がべーっと舌を出して、そういったときに、首に鋭いものが当てられていた。割れていたガラスの破片を双樹が詩織の喉元に当てていたのだ。軽く押し込められていて、そのまま少し力を入れれば、たちまち、詩織の動脈を傷つけていることだろう。先ほどのすまし顔の双樹からは想像もつかないほどに睨みつけながら詩織にすごんだ。
「あいつの話題を私の前で一欠片でもしないでくれる。殺すわよ」
 いつもならビビッてペコペコ謝るところだが、詩織は自分の兄のときだけは引き下がらない。
「やってみなさいよ。私、あんたに謝るつもりもないし、媚びだって売らないわよ」
 ほんの数秒、数分のにらみ合いが続く。しかし、短い時間に思えるそれは、体感だと何分も何時間にも感じられるほどの緊張感を帯びていた。
 やがて、双樹が手を引いた。指を開くと、薄く血液が付着したガラス片が地面に落ちる。双樹の手から血が滴っていた。それを軽く舐めると、また振り向いて歩き出す。
 詩織は腰が抜けそうになるのを我慢して、また後をついていった。いつも、この二人の中でこの会話があるたびにこのやり取りは再現される。双樹は詩織の兄――真木沙羅維を嫌っているし、怨んでいる。本当ならば殺したいほどらしいが、その理由を詩織は知らなかった。殺さないのは、所長が双樹にストップをかけているからだとか。
 いくら双樹が強くても、恐怖の対象でも詩織にとって沙羅維は尊敬できるし、一番守りたい対象だ。だから引き下がるわけには行かない。もしも、双樹が沙羅維に牙を剥くとしたらそのときは刺し違えてでも双樹と戦う覚悟はできている。
 無言のまま、階段を下っていく。しばらくして、さっきのやり取り以来口を閉ざしていた双樹が口を開いた。
「それにしても、所長にはどう説明をしようか」
「ん、どういうことよ」
 双樹の話の意味が飲み込めずに詩織は聞いた。うんざりしたような表情を作って、双樹が説明をする。
「あなたは気絶してたからわからなかったかもしれないけど、あいつ、切ったときに手ごたえがなかった。あいつ、本体じゃないわよ」
「ええええ、これまた面倒な」
「まぁでも、あれが今回の依頼では本命だったかもしれないし、最初から分身だけだったのかもしれないからなんとも言えないけれど」
「そうかぁ」
 やがて、外に出た。建物の中にいるときよりも強烈な月光をその身に感じた。これからまた来た道を行かなければ行けない。きっと家に着くころには朝が近いだろう。課題は終わりそうにない。課題と一緒に報告書も作成しないといけないから骨が折れそうだ。
 移動しながら思う。今回の依頼はこれでひとまず終了となろう。しかしだ。双樹は不安に思えてならない。この依頼、完遂はしていないはずだ。まだまだこの先に道が続いているのだろう。
「……いつ終わるのやら」
「なんか言ったぁ!?」
「なんでもないわ」
 双樹は走る。夜風を体に受けながら。この空の黒さが妙にこの先に続く不安につながっている気がしてならないと感じながら。
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