オンライン小説ブログ~青春文芸部~

スポンサー広告


スポンサーサイト

--.--.--  *Edit 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



カテゴリ別オンライン小説ランキング 小説・詩ランキング
*Edit TB(-) | CO(-) 

「長編『文芸部ウォーズ』」
プロローグ『ある昔のこと……』


プロローグ『ある昔のこと……』

2010.04.19  *Edit 

 いつも、一人だった。
 少女は一人。
 ただ、ただ、膝を抱えて座り込んでいた。それは、何も無かったからだ。少女の心はひたすらに空っぽで、何も無い。ここは暗闇。“伽藍洞”という名の暗闇だった。
 いつからだろう、そんな、無人世界に光が差したのは。
「ねぇ、淋しいの?」
 少年は言った。野球帽を被って、手には筆箱とスケッチブックを持って。
 少女は何を答えていいか分からずに、呆然と少年を見つめた。それを肯定の意味と受け取ったらしい少年は、一回、ニコッと笑ったてみせた。それはなんだか、そう、例えるならハロゲンライトの光のようで、灯篭のような温もりがあった。
「じゃあさ、僕が、元気になるお話を読んであげる」
 文香には内緒だよ、と少年は知らない人の名前を言って、悪戯っぽく人差し指を口元に当てるとまた、笑う。そして、
「これは、ある国の王子様のお話です……」
 少年はスケッチブックを開くと、何やらお手製らしいクレヨンと鉛筆で書かれた物語を読み始める。それはとても、感動した。
 物語が、少女の心に入り込み、勝手に情景を作り出した。王子様がお姫様とダンスを踊り、楽しいワルツを奏でる。お姫様と王子様が離れ離れになってしまう時、自然に涙が頬を濡らす。そして最後のエピローグ……。
「うわあ」
 少女は目を輝かして、そのお話の終わりを聞いていた。
 暗闇には光が差し込み、遥かな草原が広がって、心に感情が満ち溢れて。心の底から楽しいと思えた。
「どう、かな?」
 少年は恥ずかしそうにこちらを伺う。どうやら、感想が欲しいらしい。何も嘘を言う訳が無い。少女は満面の笑みで答えた。
「あなたのお話は、魔法みたいだわ。楽しい魔法よ!」
「そ、そうかなぁ」
 少年ははにかんで笑った。その笑顔に釣られて笑う。今このときから、少女は暗闇から解放されて、太陽の下を歩けるようになったのだった。たった一人の少年の、たった一冊のスケッチブックの中に広がる、楽しい魔法のおかげで。
 その時の事がきっかけで、少女には夢ができる。
 しかし、それはまた、別のお話。
スポンサーサイト



カテゴリ別オンライン小説ランキング 小説・詩ランキング
*Edit TB(0) | CO(0)
Tag List  [ * ]   [ *長編 ] 

~ Comment ~

 管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

MENU

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。