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「長編『文芸部ウォーズ』」
第一章 まずは出会いに感謝を。


第一章 まずは出会いに感謝を。

2010.03.26  *Edit 

 第一章 まずは出会いに感謝を。

 ――しばらく考えた末に見つけた答えがある。
 それは“みんなが会う理由”“なぜであったのか”と言うことだった。
 でも結局それは、偶然に見えた必然だったのかもしれない。それが正しいかどうかは神様しか分からないけど。それでも僕は思うのだ。
「ねえ、僕たちは出会うべくして出会ったんじゃないかな? 無駄な出会いなんてあるわけないんだから」
 なぜだろう。
 理由なんかない。ただただ、僕は微笑んでいた。
隼人愛読書「手と手を繋いだら」より抜粋。



ほの暗い部屋。一人分の人間の影が壁に伸びている。デスクトップ型のハロゲン電球の光と、液晶のディスプレイからの光のみが光源になっていて、後は限りなく静寂で、唯一つ、例外があるとするならば、それは隼人がキーボードを打つ手を休めていないということだけだった。ディスプレイの中では、まとまれば意味を成す文字の羅列が、書いては変換。また書いては変換、と。それはまるで、激しい音楽を奏でるように躍っている。見事なブラインドタッチだった。
「う~ん」
 ここに来て約一時間くらいか、いや、もっとだろう。なんせパソコンをつけてからずっとこの作業をしているのだし。隼人はふと、キーボードを打つ手を止めた。
 軽く指を鳴らす。少し、肩もこってきたみたいだ。
「ここは、こうでいいよなあ」
 視線はやがて、少し下向けになって、大雑把に乱雑に書かれたメモ帳にいった。そこには、色々な人名、癖、性格や詳細的なデータが書き並べられている。そこをみて、何かを再確認していたみたいだ。
「いや、でも、この場面ではあえて、これを起こしたほうが、イベント的にもいいはずだ。“転”の所は何かと無いといけないからなあ。ここで読者にはインパクトを持ってもらうとして……」
 また、考え始めたかと思うと、ぶつぶつを繰り返す。かれこれ十分は経ったのではないのだろうか。
 実は今、隼人はプロットの構成に忙しい。ちなみにプロットというのは物語のベースになるものだ。簡単に言えば概容、といえば理解していただけると思う。プロットは約四章~分はあって、それぞれ最初の説明、プロローグを「起」。その他、周りの変化が訪れ始め、物語が本格的に進もうとするところを「承」。劇的な変化があり、要は物語の核――中枢になる役割を果たしているのが「転」。そして最後のエピローグ、物語の締めくくりが「結」。という風に分類されているのだ。小説を書けるようになってくれば、それが五章になったり、六章になったりするが、大体、入門偏は四章で合っているはずだ。そして、本編を書く前に一通り、物語中に起こるイベントやキャラ設定を確定するのがプロットである。これに肉付けを加えることで「小説」は完成するのだ。
 話を戻すと、隼人はその作業に没頭しているところだった。理由は一つしかない。それは今年の十二月に開催される、全国高校文芸連合(略して文連)主催のコンクールがに出展するためだった。ジャンルは今回、恋愛関係で行こうと思っている。
「う~ん」
 ちょうどプロットは“転”の部分だった。何かしらのアクションを起こして、読者を一気に引き込むところである。しかし、そこがよく思い浮かばない。
 小説とはつまり、空想の世界なわけだから、フィクション的なものを書いても当然いい。地球が二つでも、耳が猫でも、果ては、空を人間が飛んだっていいわけだ。しかし、ここで気をつけなければならないことがある。それは“登場人物を多くしすぎない”ということだ。これは一見、物語を進めやすいのだが、実は曲者だ。登場人物を多くするということは、それぞれの描写を書かなくてはいけない、ということに繋がる。つまり、他のキャラを蔑ろにしてはいけないのだ。隼人はここを誤った。登場人物が多すぎて、物語を動かせなくなってしまったのだ。
「途中まではよかったのに」
 隼人は指をトントンさせながら考えてみる。あそこで主人公をああして、ヒロインをこう持ってくる。すると、あいつは……
「ああ、駄目だ!」
 やっぱり駄目だ。いわゆるスランプ。物書きをしている人には必ずあるものだ。ここの間が埋まらない、とか。思いつかなくなった、とか。でも、今は時期が時期なだけに、時間が惜しい。ただでさえ、コンクールだけじゃなくても、部報や文化祭の出し物などであまり余裕が無いんだ。
 隼人がそうやって頭を抱えているときだった。
 コンコン。
 ノックがする。また、親だろうか。先ほど、気が散るからと怒鳴ったばかりなのに。まだ分からないのか。そうか、そうか。よく分かったぞ。
 隼人は肺に大きく息を溜め込んだ。そして、
「さっきから、うっせえって言ってるだろうが!」
「ひっ」
 ひっ? 隼人は怒鳴った後に聞こえた小さな悲鳴に疑問を覚える。こんな可愛らしい声で母親が言ったのか。やめてくれ、それを思い浮かべると鳥肌が立つ。それだけはやっちゃいけない。でも、だれだ? 父親はもちろん違うとして、母親は違う、姉は今日は徹夜と言っていたし……と言うことは。
 だらだらと、冷や汗が額を伝った。消去法にて考えたところの結果。相手がある一定の人物しか思い浮かばない。して、その人物とは、
 ガチャリ。
 音を立てて隼人の部屋のドアが開く。恐る恐る後ろを振り返れば、そこには……ほらやっぱり居た。
 隼人の後ろに立っていた人物とは、隼人の義妹、茜であった。隼人がこの世で一番愛しているといっても過言ではない人物である。
 うるうるとその大きな可愛らしい瞳に一杯水の膜を張り、立ち尽くす茜。隼人は罪悪感と後悔の波に飲み込まれ、早速机から麻のロープを出すことを決心しかけていた。ちなみに、机になぜ麻のロープなんぞが入っているか、という些細な疑問は考えずに居て欲しい。それは野暮と言うものだ。
「ひどいよぉ、お義兄ちゃん」
 ぐす。
 茜は先にも増して、悲しみのボルテージを上げていた。コップ一杯に満たされた水の状態とでも比喩しておこうか。とにかく茜は泣く寸前であった。
「茜、お義兄ちゃんが疲れてるかもって、おにぎり作って持ってきたのに」
 何? 俺なんかのためにおにぎりを! 隼人は立ち上がりかける。
「そんなに酷いこと大きな声で言うなんてぇ、茜、恐かったんだからぁ」
 茜は持っていた皿を落として、膝をついた所でいよいよ泣き出す。隼人は、カマイタチよろしくなスピードで、一つも落とさずにおにぎりをキャッチした後、茜の場所に駆け寄った。泣いている義妹を前に、ただ、オロオロとするばかり。正直、かなり間抜けな格好だろう。
「ごめんなぁ、茜ぇ」
 隼人はすばやい動きで茜を抱き締めた。少し力を入れすぎたかもしれない。「痛いよぉ」という茜の声を聞いて隼人は正気に戻った。
 それぞれ居住まいを正すと、隼人は椅子に、茜は隼人のベッドに座った。隼人はとりあえず釈明をする。
「あのな、本当にごめん! あれはな……もぐもぐ」
 隼人は茜お手製のおにぎりを口一杯にほう張りながら、釈明した。遠めに見るとハムスターに見えなくも無い。しかし、おにぎりを口に釈明とは、全然誠意が篭ってないという奴も居るだろうが、断じて、これが隼人の精一杯の誠意なのだ。多分、義妹に対する誠意が感じられなくなったとき、隼人の自我は崩壊するだろう。まぁ,ぶっちゃけて言えば、隼人は重度のシスコンなのだ。
 隼人が更に釈明の言葉を言おうとしたとき、茜が、隼人の口についていたご飯粒を手でつまむと自分の口入れた。
「大丈夫だよ、分かってるもん。お義兄ちゃんは、小説が上手くいかなくて、ちょっとナーバスになってただけでしょ? お義兄ちゃんが私だって分かってて、あんな、酷いことするはず無いもんね?」
「おお、もちろんとも」
 そこは全力で肯定することで誠意を見せることにする隼人。
 茜はふふふと身分相応な、可愛らしい笑顔で笑った。
 ここで補足をしておくと、この美少女は松部茜。茜は松部隼人の義妹である。しかし、ここで問題が一つ。それは茜が本当の妹ではないということ。茜は隼人の母が仕事上のすれ違いで離婚してから三年、いつの間にか再婚してから、その相手方の連れ子が茜その人である。いわゆる“義妹”というやつである。しかし、この茜と言う人物、ズバリ、小動物系なのだった。見ていると放っておけない。手を貸したくなる。何より、可愛い。一目、茜を見たときからとっくに、隼人はシスコンであった。とりあえず、言っておくが、これは恋と呼ばれる感情でも、ロリコンというわけでもないことを釈明しておきたい。あくまで“シスコン”なのである。今では、ヘタな恋人たちよりよっぽど仲がいい。
 茜も、隼人のことは好いている。最初こそ、人見知りの激しいほうである茜が、隼人になびくはずも無かったが、何がきっかけか、あの出来事以降、隼人同様、茜も重度のブラコンになっていた。もう、お兄ちゃん好き好き~ってな感じである。隼人に近づく女はかなり痛い目に遭っていた。とある例外を除いて。
「お義兄ちゃん、ちなみに、ね?」
「ん?」
 茜が隼人の目を覗き込んでくる。茜のその、純朴のその物の栗色の瞳には隼人の惚けた顔が映し出されている。隼人は少し動悸が激しくなる。
「私が、泣いたのって、フリだから」
 にしししと茜は大げさに言うと、悪戯っぽく笑う。まるで、小悪魔のように茜は隼人の心にするりと入ってきた。茜が、先ほどよりも距離を離したのが名残惜しくて堪らなかった、のだが……あれ? 今、茜の口からとんでもない言葉が出てきたような、無いような。
「へ?」
 もう一回、今の言葉をプリーズという意味の意味あり視線を送ってみても、なぜか、茜は頬を赤に染めてうつむいた。気にならんことも無いが、何よりも、どんなことよりも、茜が可愛くて、そんなことはどうでもよくなってしまう。
「あのね」
 もじもじ。
「私、ね」
 もう一回もじもじ。
「お義兄ちゃんに抱き締めて欲しくて、ちょっと泣いた振りしてみたんだよ?」
 更にもじもじ、ついでに上目遣い。ほんのり赤色に紅潮した頬で、潤んだ瞳でじーっと隼人を見つめている。ずがーんと、一際大きい雷が隼人に落ちた。脊髄がしびれて、感極まったようになる。あの可愛さは、もはや犯罪の域だ。
「もう、もう……」
 隼人は自らの体を、震わせていた。怒りにかって? それは違う。隼人の属性をよく考えてみてくれ。大体は想像がつくはずだ。
「お前って奴はぁ~~~~。何て、可愛いんだぁ」
 がばっと隼人は茜を抱き締める。あらかじめ、これから何が起ころうか予測していた茜は、腕を広げて、おおげさな猫撫で声で「やん」とか言ってみる。
「もう、お義兄ちゃんの甘えんぼさんなんだからぁ」
 茜は愛おしそうに、胸にしがみ付く隼人の頭を撫でてやった。というか、これをやらないと、茜はその日一日落ち着いていられない。
「でもぉ、今日はちょっと茜を恐い目に遭わせたバツとして、一緒に寝るんだよ?」
「ああ! そんなことで茜の気が済むなら!」
 感無量といった感じで、目をうるうるさせる隼人。今までこんなことをやっていて、間違いが起こらないことが奇跡に等しいと思う。茜に迫られそうになったこともあるらしいが、いつも隼人がそれを拒んだのだ。
 本当に馬鹿のつく、シスコンとブラコンである。
「もう、あんたたち! うるさいわよ!」
 下からは、いい加減現状に慣れている母の怒声が聞こえてきた。
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