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「短編・SSその3」
『アマノジャク』


『アマノジャク』

2010.03.10  *Edit 

「嫌いよ」
「は?」
 そんな言葉から始まった。俺とその周りにいた友人達は一様に口をぽかーんと開けてアホヅラを決めていた。
 気来よ?
 キライヨ?
 きらいよ?
 ん? それって何?意味分からない。だって、この状況でこの一言を言ってのけるのは相当に至難の業であると同時に、一級品なKYだろうと思う。
 先程まで賑やかで華やかだった宴会場(ただの居酒屋の個室)はすっかり冷えて氷点下になってしまっていた。彼女は続けていった。
「大体ね、あんたのそういう優柔不断なところが嫌いなの!! どうにかしてよ!」
 至極整った綺麗な顔で言うと、ビールの大ジョッキをぐいっとあおって、大きな音を立てて机に置く。ついでにねぎまは一本分を、一気に口の中に頬張った。これまた綺麗でプリッとした唇をタレで汚しながら。
 とりあえず、どうしてこのような状況になってしまったのかと言うと、それは遡ること十分前の話。宴会も中盤に差し掛かったときの話だ。
 いつものように大学のメンバーで集まって、酒を飲みあっていた時に、ある話題が浮上した。まぁ定番なあれだ。好きな奴は誰と、とか、今、付き合ってる奴いるんだろ? みたいな。まずは女性陣が一通りマニュアルみたいなことを言い終えた。男子はそれを合コンのノリで聞き終えると、次は自分達の番だと意気込む。
 そして男性陣最後の語り手が俺だった。
「なぁなぁ、お前はいるの、いないの?」
 そいつは、仮に友人Aは小指を立ててニヤリとして聞いてくる。他のメンバーも表情は然り。一人は除いて。とりあえず俺は、友人Aの小指を逆に折り曲げてから、Aが叫んでいるのは無視して言った。
「ん~~。いないんじゃない?」
「じゃないって何よ~」
「そうだぜ。俺達言ったのによ~」
 おーおー来るわ来るわ文句の嵐。そりゃあ俺だけ乗れてないんだからそうだよな。でも、生憎俺の彼女さんからは他言無用と緘口令が敷かれてるわけで。無理なのさ、というのはもちろん口に出すわけでもなく、すっとぼけてみる。
「言えよ~」
「居ないって」
「言えってばー」
「だから、以下略」
 こんなことを続けて、最初に戻る。これが真実だ。まぁ種明かしをすれば、俺とあのKYな女性とは恋人同士ですとも。言わないけど。てか言えないけど。
 多分、答えに煮え切らない俺につい、怒ってしまったのだろう。学校では厳しいクールビューティだし。
「もういいわ。今度またしましょう。興ざめしたわ」
 メンバーの一人が言い出した。確かにこの空気を元のテンションに戻すのは至難の業と言ってもいいと思う。あっという間に俺と彼女の二人になった。
「なぁ」
「何よ」
 彼女がギラリと睨んでくる。だからその目やめろって。俺のチキンハートが燃え尽きるだろう。言わないけど思ってみる。
 どうせ何を言っても今はこんな調子にしかならない。ならば建設的な方向に持っていくのが吉というものだ。俺はめげずに話しかけた。
「出ようぜ」
「……」
 外は寒かった。息を吐けば白くなるし。何せ財布の中にはすっからかんで空気が……ってこれは関係ないのか。
 俺達はしばらく、歩いた。隣には無言で一定の距離を離して付いてくる彼女が居る。とっても寒そうだった。
「こっちに来ればいいのに」
「嫌よ」
「何で?」
「何でって……」
 彼女は口ごもる。怒りたい理由は分かるよ? 俺はこんな性格だからあの時、あんな言い回ししか思いつかなかった。でもねぇ、それを怒ったってねぇ、しょうがないでしょうに。
「あ~あ~。はいはい。分かってる。その先は言わなくてよろしい。落ち込むから」
「落ち込むなんて性格してないでしょうに」
 彼女があまりにもふてぶてしく言うものだから、
「違いない」
 と笑ってしまった。そして居住まいを正す。幾ばくか歩いたからか先程のネオン街のネオンも酔っ払い親父やホストにキャバクラの客引きも遠のいて、住宅街の公園にまで差し掛かった。まだ家にはすこしある。俺は彼女の前に立つと「ごめんなさい」と頭を下げた。
 すると、
「許してあげない」
 グリグリ。
 彼女は俺に近づいて、頭を振って擦り付けてきた。
「ゆ~る~してあげない!」
 グリグリグリ。
 さらに彼女の頭を振る速度は上がる。あ、そういうことか。
「ごめんねって言ってるじゃん」
 俺は静かに彼女を抱き締めた。
「あ~げ~な~い~!!」
 さらにスピードを上げる彼女。そこでやっと、合点が言った。そうか。そうね。そういうことね。はいはい。お嬢様。
「ごめんね。でも、いつまでも俺が好きなのはお前だけだからな」
 よしよしと頭を撫でてやるのも忘れない。すると彼女の頭は予想通りに止まった。本当に分かりやすいなぁ。そして消えるような声で一言。
「わ、私も……」
「ん? 私も、な~に?」
 つい悪戯心が働いて、言ってしまった。しまったな。ってことは次に来るのはあの言葉か。
「き・ら・い!」
 そしてあの頭振り攻撃が再開される。やれやれ。今度はどう言ってなだめようか。本当に、本当に俺だけのお嬢様は……
 ――アマノジャク、なんだから。

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