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「お題小説」
『車内でのワンシーン』


『車内でのワンシーン』

2010.03.10  *Edit 


 ふと隣を見た。
 車内にはこの風景にマッチしたR&Bが控えめな音で流れている。握り締めるハンドルの感触がなくなる位に長い時間を運転している気がする。
「車、進まないね」
 隣の彼女が言う。僕が彼女を見ていることには気づいていないようだった。彼女はひたすらに退屈を紛らわそうと外の風景に見入っていた。窓を開けているから外の音が車内にも流れてくる。音楽とは別にさざなみの音や潮の匂い。カモメの鳴き声まで聞こえてくる。
 あまり会話が無かった。それは当然であるかもしれない。何せ早二時間はこの渋滞に巻き込まれているからだ。最初こそ話していたがだんだん口数は減り、彼女の興味は完全に外に向いてしまっている。
「ずっと見てるけど飽きないの?」
 僕はふと疑問を口にしてみた。だってさっきからずっと外を見てこちらを見ない。よほど楽しいものでもあるのか。気になってしまったのだ。
「何も無いよ。何も無い。夕景が広がってるだけ。けど……」
「けど?」
 確かに沈む夕日を見るのは退屈しないかも、と続けてまた黙ってしまった。そんなときに音楽がR&Bからロックに変わる。アーティストはサザーランドで“涙雨”が流れている。
「そう」
 音楽に乗せて彼女が鼻歌を歌っている。そういえばこの曲は二人とも好きな曲だったっけ。
 そう、君はこの歌に乗せて鼻歌を歌い。僕がそんな君をじーっと眺める。君はそんな僕にきずかない様に長い黒髪を風になびかせて。僕はそんな君に見とれてしまって。
 そんな何時の日かの記憶を思い起こして感傷に浸っていると、
 プーッ!
 いきなりけたたましいクラクションの音が僕の車に響く。音の近さからどうやら後ろの車のようだ。前を見ると車二台分くらい進んでいた。迷惑をかけていたみたいだ。
 僕は慌ててアクセルを踏み車間をつめる。先の音で気がついたのか、彼女はいつの間にか僕のほうを向いていた。
「なぁに、ぼうっとしちゃって。もしかして……見とれてた?」
 別に、といって前を見る。見なくても彼女のいたずらな笑顔が思い浮かぶようだから。
 車はすぐに車間をつめて、また列はとまってしまう。どうやらまだしばらくかかるみたいだ。
「また止まっちゃったね」
「そうだね」
 僕がさっきのお返しとばかりにそっけなく言ってみると、心なしか隣から威圧的な視線を感じないわけでもない。
 そしてすっと彼女の手が僕のギアを持つ手に添えられた。
「つまらないから何か話そうよ」
 声が寂しそうだった。この声を聞くとどうしても庇ってあげたくなるものだ。僕はにこやかに彼女のほうを向く。
「いいよ。何を話そうか?」
「そうだねぇ~……」
 まずは思い出でも話そうか。
 心地よい“涙雨”に乗せて。車の中では穏やかな時間が続いていた。
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